2017年05月21日

味と本味

「小さなイノシシは柔らかいけど本味は無いよ。本味って奴はでかい奴にしか無い。」
いつもの猟師のお客さん。
いつも山を駆け回り気が向くとうちに寄る。職種は違うがいつも一理ある事を言う。
今、世界のコーヒーの潮流は「サードウェーブコーヒー」というカテゴリーになっているらしい。詳しくは書かないが産地・品種・生産方法や精選方法などにこだわり概ね味覚審査で選んだ豆を浅煎りで飲む。高知にはまだこの流れは定着してない様に感じるが逆に中深煎りにして誰にでも解りやすいコーヒーの味にするという潮流がある様な気がする。
コーヒーの酸味・苦味などの味は焙煎の熱による化学変化に左右される事が多く、良い豆を使うのは勿論だが、それをどう使うか?(どの焙煎度にするか?)も非常に重要になる。
珈琲の会社にいた関係で多くの豆に触れる機会があった。まだ世に出ていない品種やこれから展示会に出す豆のテストロースト、自分の会社の物だけで無く付き合いのある会社のものまで・・。
そんな中で自分の中の珈琲感という感覚を作り上げてきた。ブラジルとは概ねこんな味、コロンビアはこんな感じ、ティピカ種ってこんな感じ、ブルボン種はこんな感じ、ナチュラル精製はウォシュド精製は、○○さんの焙煎と○○さんの焙煎の違いとか・・・。
沢山のこんな感じを集めてコーヒーという物の尻尾を掴んできた。
巷には様々なコーヒーが存在する。当たり前の事だが千差万別または玉石混交。
自分にいつも問いかける。この豆の味覚特性を素直に出せてるか?ブレンドであれば意図した味に組み立てられているか?焙煎度がストライクゾーンに入っているか?
コンテストで入賞した豆がインターネットオークションで高値で取引される時代。奇をてらった風味を持つ豆があったり、大御所が勧める豆を鵜呑みにして盲目的に良いと判断し、言われた焙煎度に仕上げる。時代の潮流に合わせ過ぎる。自分の中の珈琲感がしっかりあれば小さな事に左右されず普遍的なコーヒーが出来るはずなのだが・・。
自分の追い求めている味は?・・・「本味のある珈琲」
心の中に在るものを言葉に変えて貰った気分。
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※席数8席の狭小店舗です。4名以上のお客様は全ての時間でお待ち頂く可能性がございます。出来ましたら少人数でお越し頂く事をお勧め致します。
※当店は珈琲を飲める年齢を対象とした店舗です。「本物の珈琲の味を楽しむ。」ただそれだけの静かな店ですので、全てのお客様にそれなりのご配慮をお願いしております。

posted by 店主 at 23:03| 珈琲物語

2017年01月14日

寒さ払いの珈琲の話

江戸時代末期、蝦夷地(北海道)にはアイヌ民族との交易所がいくつもあったそうだ。1806年樺太と利尻のその交易所がロシア海軍に襲われた。その事態を重く見た幕府は、蝦夷地を直轄地とし、寒さに強い東北の諸藩士を北方警備に派遣した。1807年宗谷で任務についた230名。しかし想像を超えた寒さと食糧不足で70名余りが倒れ北方警備は悲惨を極めたと記録されている。その約半世紀後の1855年再び蝦夷地の警備に向かった津軽藩士らに幕府はコーヒー豆を支給した。
函館奉行はこう通達したと言う「和蘭コーヒー豆、寒気を防ぎ湿邪(しつじゃ)を払う。」
その昔長崎の出島に持ち込まれた医学書にもこのコーヒーの効用が書かれていたという。
また現在、北海道稚内宗谷公園にはこの史実を後世に残す為、コーヒー豆をかたどった「津軽藩兵詰合記念碑」が建立されている・・・。
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ここ数日、厳しい寒さがつづいている。駆け込む様に店内に入ってくるお客様の顔はどこか青白く厳しい。店内に入り「いつもの」と言いながら席に滑り込む。ほどなくいつものスペシャルブレンド・・。
熱い液体を少しづつ胃袋に送りこむ・・ホッ。たわいない雑談、たっぷりと通常店の2杯分出しているにも関わらずおかわりを2回。「ごちそうさん」って言った顔がほんのり赤く上気していた。
北海道と津野町寒さも時代も違うけれど、珈琲はいつも凍えた人を芯から温める。
凍えながらいらっしゃるお客様同志はなぜか心を開いていて、和気あいあいと語り合う。
山の避難所の様な昨今の当店。
posted by 店主 at 20:18| 珈琲物語

・自家焙煎珈琲 ・手作りケーキ ・コーヒー豆の業務卸 ・コーヒー器具、雑貨
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